服部公太郎 アーティスト|インタビュー
身の回りにある「物」への見方が変わるかも!?
服部公太郎さんは、1年前の『ひとつぼ展』で絵を描くためのキャンバスを、作品を作るための素材として見直し、そこから鹿のオブジェを作り上げました。その斬新な発想と可能性が評価され、見事グランプリを獲得しました。様々な視点で、身近にあるものを別の物へと転化し、新たな見方を提示する服部さん。完成した「物」は遊び心があり、存在感があり、見る側の思考に働きかけます。広告代理店でデザインの仕事をしている服部さん。デザインとアートについて、また、現在に至るまでの経緯をうかがいました。
美術との出会い
美術に興味が出たのは、高校で美術部に入ってからです。この頃は、マグリットと福田繁雄、あと赤瀬川原平が僕のスターでした。東京芸大を目指して受験したんですが、落ちまして、一年間東京の予備校に通いました。そこで、立体の課題が出て、参考になるような文献を探してる時に、アントニー・ゴームリーと、リチャード・ディーコンの立体作品に出会ったんです。現代美術ともいえるかな……。凄い刺激を受けて、立体や現代美術に強く興味を持ちました。子供の時から色が苦手で下描きではいい絵なのに、色を塗り始めるとダメになるねって言われたのをよく覚えてる。色彩感覚がなかったんです。予備校でも立体はいいけど平面は全然ダメでした。
芸大時代
芸大はデザイン科です。僕が入った時は、デザイン科といっても何でも出来るっていう風潮でした。まだやりたいことがはっきりしなかった僕には合っていたんです。ほとんどデザインの授業はなくて、絵を描いたり、立体を作ったり、画集を見たりして、興味のあるものを突き詰めていった。1年の後半には、コカ・コーラの缶の表面を削ってできた粉と、表面の柄がなくなった缶を「2つのコカ・コーラ」という作品にしました。徐々に自分の作品は受け入れられるのか? って悶々とし始めて、いろんなアートシーンを調べていくうちに、“もの派”を知ったんです。“もの派”の美術運動は考え方が面白かったし、その文脈上で自分のアートを説明できないかと考えていました。
https://scrapbox.io/files/64e4195b976a55001cd12cb2.jpeg https://scrapbox.io/files/64e4195f07558600205b2ce9.jpeg https://scrapbox.io/files/64e4196d953e4b001c4715cc.jpeg
https://scrapbox.io/files/64e41979f2e367001c8131ae.jpeg https://scrapbox.io/files/64e4197db55aaf001c00d39a.jpeg
「ファブリカ」に参加
大学院に進んだ年に、「ファブリカ」に一年間留学しました。「ファブリカ」はベネトンが若い才能を育てるために作った学校のようなもので、イタリアにあります。与えられたプロジェクトに対してアイデアを出して、それが気に入られたら企業と一緒に実現化するっていう感じです。不慣れなこともたくさんあって、神経症になってしまって(笑)……。パニック障害というのですが、動悸と強い不安感に襲われるんです。半年くらいその状態でした。それで、割と独りで本を読む時間が増えて、哲学書もやっと読みました。その時に初めて本というものに出会った感じがします。大きな収穫でしたね。特にニーチェの『道徳の系譜』はおもしろかった。
デザインとアート
大学院を修了後、先生に薦められて広告代理店に入りました。社会に出て、改めてデザインとアートは違うなと思いました。作品を考える導入部分からして違うんです。広告の仕事って、クライアントとの共同作業です。見る人とのコミュニケーションをゴールに見立てる必要があるんです。アートでは、必ずしもコミュニケーションを目標とする必要はないと思ってます。
しかしデザインをやっていて、自分の作品にいかされることも多いです。やっぱり美意識が凄く高くなった。デザインって0.1ミリでも文字のズレがあると見え方が違ってくるから、ミクロな視点に強くなりました。今回の個展では、完成度を意識して、一つ一つの作品に時間をかけることができました。DMの作品は、紙くず自身の自己紹介として作った。会社に勤めて3年目。今まで下積みだったから、ADとして独り立ちしたら、見えてくるものがまた違うかもしれないです。映像も好きだから、CFやってみたいですね。
https://scrapbox.io/files/64e4161e75a4e4001c1c1e1c.jpeg
1977年 岐阜県生まれ
2001年 東京芸術大学美術学部卒業
2002年 ベネトン奨学金プログラム[FABRICA]に滞在
2005年 東京芸術大学美術学部大学院修了
[受賞歴]
1999年 アーバナート#8 審査員特別賞
2000年 写真新世紀展 佳作
2003年 GEISAI#6 審査員賞
2006年 FOR RENT FOR TALENT 入選
2007年 第28回グラフィックアート『ひとつぼ展』 グランプリ
[展覧会]
1999年 アーバナート#8(渋谷パルコ)
2000年 写真新世紀展(表参道)
2003年 ミラノサローネ出品参加
2004年 Aランチ(AXIS GALLERY ANNEX/六本木)/個展「Point to Circle」(ギャラリーROCKET/表参道)
2005年 俺の石膏像展(EXPO/上野)
2006年 Nameless Object(フタバ画廊/銀座)/FOR RENT FOR TALENT(三菱地所アルティアム/福岡)
2007年 第28回グラフィックアート『ひとつぼ展』(ガーディアン・ガーデン/銀座)
展覧会のページへ戻る
INTERVIEWへ戻る